交通事故のせいで受験できなかった場合

 受験生のいる親は、子供が入学試験に臨む日は無事に自宅まで戻ってきて欲しいと願うものです。しかし、試験会場へ向かう道の途中で何が起こるかは親も子供本人もわかりません。中には、途中で交通事故に遭遇するケースも考えられます。もし、試験当日に交通事故にあったら、受験生は試験を受けることを断念せざるを得なくなり、進学も諦めざるを得なくなってしまいますが、交通事故後に損害賠償を請求する場合に、受験に臨む機会を失ったことによる損害の分も含めることはできるのでしょうか。

 結論から述べると、受験の機会を失ったことによる損害を賠償請求額を含められるかどうかは、損害が生じたことを被害者である受験者が証明できる見込みがあるかどうかによります。このケースで被害者側は、被害を受けた受験者が交通事故に遭遇していなければ、入学試験に受けることができ、なおかつ合格をして進学をしていたということを証明する必要があります。これを証明するための資料となりうるのは入試直前までに被害者が受けた模擬試験の成績で、裁判所がこの資料と被害者側の主張から志望先に入学するのに十分な学力があったと判断すれば、損害賠償の請求が可能となるでしょう。

 しかし、学校に入学してから進路を決める時期までずっと好成績をキープできる学生は稀であり、大抵の学生は学生生活を通じて学力成績の上下動があります。また、入学試験は受けたからといって合格できるとは限らず、模試で合格率が高いと判定されても、本番で不合格となってしまうケースも多々あります。このため、裁判で損害を認定する場合もあれば、そうでない場合もあるのが現状です。
なお、仮に損害が認定された場合は、賃金構造基本統計調査に基づいて算出された平均賃金をもとに、損害賠償額が決定されます。