交通事故の後遺症 外国人の場合 賠償金の算定基準が異なります

 交通事故の慰謝料は、被害者がその事故で負った損失を賠償するために払うものです。このため、外国人が被害者となった場合には、その人の在留資格によっては、大きく額が変わることがありえます。例えば、日本より物価がはるかに安い国から来た観光客が事故にあった場合、その人の損失の大部分は母国に帰ってから発生します。

 このため、慰謝料もその国の物価や生活水準に合わせて計算されることとなり、結果、日本人の場合より額が低くなります。
この考え方に則ると、在留資格が長期滞在や永住資格であった場合は、基本的に日本人と同額の賠償が認められ、在留資格が短期滞在であった場合は、基本的に現地での基準に従って賠償が決められることになります。では、在留資格が就労資格だった場合はどうでしょうか。

 この場合、「もし事故に遭っていなかったら」という仮定が重要になります。もし日本で今後も資格を更新し、日本で働き続けるつもりの人であった場合(そしてその証明がある程度できる場合)、その人の受けた損失は、当然日本の物価を基準に考えられます。一方で、数年間の出稼ぎなど、一時的には日本で働くものの、その後は母国に帰る予定だった場合、日本で稼ぐ予定だったはずのお金は日本人と同等の基準で計算されますが、帰国後分の慰謝料については、その国の基準で考えることになります。

 また、これらは実態を最優先にして考えるので、たとえ被害者が不法就労であったとしても、日本で働いて稼いでいたという実績があれば、ある程度はその実績に基づいて計算されます。さらに、その人がその国でどのような生活をしていたのかも重要になります。たとえ物価の安い国から来ていたとしても、普段からその国ではかなり水準の高い生活をしていた場合(母国では富裕層だった、など)には、その生活基準に基づくので、結果として日本人の場合と変わらない、ということもあり得るでしょう。